1.道空間の公共性についての概念的検討:道空間は、本来、開放性、混在性、境界性、危険性など、いくつかの前公共的特質があると考えられる。それは、異質なもの同士が余儀なくされる社会性ゼロの前公共性である。近代以降の道路建設の理念としての「公共性」の成立過程をとくに文献調査を通じて整理する作業をある程度行った。 2.対象地域の選定:初年度は、4月〜6月にかけて、まず研究の対象地域の選定が重要な課題となる。現代都市の「一般道路」において、交通事故の直接的要因にかかわる物理的環境空間ばかりでなく、人と車の共存によるドライバーと歩行者、沿道生活者の間に心理的、社会的、文化的コンフリクトを生み出す要因となる社会文化的空間構成を探り出すことを試みるために、a.首都圏近郊都市として、埼玉県、神奈川県、千葉県内の都市、b.地方都市として、札幌・小樽、沖縄那覇、金沢、熊谷、四国から松山市、高松市など地方観光都市を選定した。それぞれの地域ごとに、街の中心部と周辺部をセットで選定した。 3.ビデオ撮影による道空間のダイナミックな動きの把握:7月〜8月、および2008年2月〜3月にかけて、調査対象地域の候補のなかからいくつかを選んで、道空間のダイナミックな動きの把握のためにビデオ撮影を行った。具体的には、現地の一定区間の道路を少し高い位置から見下ろすことのできる場所を確保したり、道路空間の通行車両や人のダイナミックな動きを通行者間の相互行為儀礼に注目しつつ、定点設置カメラや歩行しながら撮影したり、移動する車の中から前方を撮影するなどの方法が取られた。
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