平成21年度の成果は二つに分けることができる。第一に、地方都市金沢の近代化過程を職人の日記にみる生活史から分析したことである。具体的には、4つの領域(職業、家族、地域社会、政治)で金沢市の近代化過程を分析し、その成果を問うために、社会学と歴史学の研究者をコメンテータに招き、シンポジウムを開催した。そこでは本研究の問題点と今後の研究課題が指摘された。すなわち、本研究には社会史の領域で歴史研究に寄与する側面があるものの、歴史学全般の研究成果を取り入れていないという問題点がある。今後の課題は、歴史学の視点を社会学に取り入れて、歴史社会学の分野を開拓することである。 第二に、本研究では質的調査における共同研究の方法を開拓した。具体的には、日記、その他の故人の生活記録、および遺族へのインタビュー記録をエクセルでデータベース化し、研究代表者と3名の研究協力者(青木秀男、水越紀子、坪田典子)が共有できるようにした。また、質的データの分析についても、エクセルの抽出機能やコーディング機能を活用し、分析の効率化を図った。課題として、エクセルを活用してさらに汎用性を高める分析方法を開拓すること、および質的データの解釈と分析にエクセルを使用することの妥当性を示すことがある。
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