平成19年度は、主に、摂食障害等のさまざまな精神的な症状を示し、生きづらさを抱え、アートによる自己表現をおこなっている人々に対して、調査をおこない、彼らが、社会との関係で障壁、差別を体験し、絵画表現活動の他、絵画作品の前での作者自身と自己表現との関連に関する語り、創作詩の朗読、音楽等さまざまな自己表現をおこなっている点を明らかにした。特に、当事者にとってのその意味づけや、彼らの社会的自己変容の分析、それを見る鑑賞者がどのように感じ、さらにどのような社会的変化がひきおこされるかという点を詳細な分析し、また、彼らを支える人間的、社会的ネットワーク、また鑑賞者に関しても調査をおこなった。 以上を関西社会学会大会(2007年5月27:同志社大学)において、「生きづらさを抱える人々の自己表現と自己イメージの変化」、また日本臨床心理学会(2007年9月6日:立教大学)において、「生きづらさを抱える若者がアートによって「自己表現」するということ」及び、日本社会学会大会(2007年11月17日:関東学院大学)において、「生きづらさを感じる人々による自己表現〜アートやセルフ・ドキュメンタリーで『自己表現する』ということ」の2件の学会発表において示した。 また、本研究は、社会学のみならず心理学等の学際的な領域であるため、社会臨床学会の学会誌である『社会臨床雑誌』(第15巻)において、家族問題に起因する児童虐待により精神的障害を抱え、それを自らの境遇をドキュメンタリーを撮ることで自己表現して、症状を克服しようとするプロセスを、論文「セルフ・ドキュメンタリーという自己表現」において示した。
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