1.E・トッドが『移民の運命』で提起した同化と隔離の移民理論と彼の世帯類型論を関係づけることにより、移民社会での移民家族構造の理論的枠組みを構築した。 2.アメリカのミネソタ人口センターで最新のIPUMUS(Integrated Public Use Microdata Series)のデータを入手し、Steven Ruggles教授おけびセンターのスタッフの協力をえて、19世紀中期から20世紀中期までのデータを分析することができた。とくに1880年(100%)データと1860、1870、1890、1900年のサンプルデータとのリンケージデータは家族史研究には有効なデータであるといえる。 3.ノルウェーとアイルランドにおいて19世紀初期から20世紀初期における家族の比較史を追究したが、ノルウェーでは19世紀初期には直系家族システムが支配的であったが、その後核家族システムへの変化がみられるのに対して、アイルランドでは核家族システムから直系家族システムへ変化するという大きな相違した変化を明確にすることができた。 4.イギリスでは「人口史・社会構造史に関するケンブリッジ・グループ」のライブラリーで研究対象国における先行研究を継続して収集することができた。それはケンブリッジ・グループのRichard Smith教授の協力によるものである。はた、同時に1960年以降のケンブリッジ・グループの40年間における軌跡の追究を関係者に対するヒアリングにより行った。 5.研究代表者が構築した移民家族の理論的枠組に基づき、アイルランド移民を事例にしてイギリス、アメリカ社会では、アイルランドの家族は本国の直系家族ではなく、移民先の家族である核家族に同化しながらも、アイルランド移民のアイデンティティをそこに内包させるという家族戦略を採用していることを明らかにした。そしてその結果をアメリカのSocial Science History学会で報告した。
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