本研究は、脳血管疾患患者が様々な苦痛や困難に対処し、ライフ(生存・生活・人生)の再構成を図っていく過程と、その過程に影響をもたらす対処戦略、支援環境について、特に変化の大きい発病後1年後までの経過を追い、実証的に把握することを目的とした。それらを明らかにすることにより、脳血管疾患患者に関する施策や実践ならびに脳血管疾患患者や家族のライフの再構成に役立てられる提言を行うことを目指している。本年度は、昨年度から本年度にかけて行った脳血管疾患の患者会の会員20名への調査結果を分析した。この調査は、自由記述を中心にした質問紙調査であり、心身機能の経過、困難だったこと、支えになったことなどについて発病後1年以内の経験を振り返ってもらったものである。調査対象者の「苦痛・困難」や「支えとなったこと」は、急性期、回復期、維持期という医学的な区分の影響を受けており、その時期ごとに特徴がみられた。おおまかにみると、急性期は(1)「生命の維持」、回復期は(2)「日常生活動作の訓練」、維持期は(3)「退院後の日常生活の再建」と(4)「人生の再構成」ということが中心的な課題となっていた。また、いずれの時期も、リハビリテーションの専門職や家族などの周囲の人々の支えが大きいといえる。発病後1年後までのライフの再構成の過程は、欧米の研究結果と同様に4区分できる可能性があるが、入院期間の違いから各区分の時期が異なっていることも考えられる。現在、調査対象先と交渉中であり、次年度はこの結果を踏まえて、患者の追跡の調査を行う予定である。
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