本研究は、脳血管疾患患者が様々な苦痛や困難に対処し、ライフ(生存・生活・人生)の再構成を図っていく過程と、その過程に影響をもたらす対処戦略や支援環境について、特に変化の大きい発病から1年後までの経過を追い、実証的に把握することを目的とした。これにより、脳血管疾患患者に関する施策や実践ならびに脳血管疾患患者や家族のライフの再構成に役立てられる提言を行うことを目指している。 本年度は、脳血管疾患患者の患者会に参加し、その様子を参加観察するとともに、患者の追跡のインタビューを行った。また、関連する先行研究をレビューし、結果を比較検討した。調査対象者の抱える苦痛・困難は、医学的な3区分である急性期、回復期、維持期の影響を受けており、急性期は「生命の維持」、回復期は「日常生活動作の訓練」、維持期は「病院からの退院後の生活の再建」とその後に続く「人生の再構成」にかかわる内容が主にあげられた。ライフの再構成に役立つものとして、「心身機能の回復」があげられ、これは維持期に入っても、微細な回復であっても、非常に重要なものであった。また、「周囲の人々の支え」はライフの再構成のために不可欠であった。 上記の結果は、欧米の先行研究の結果と似ていたが、本調査の対象者は心身機能が比較的高い在宅の患者であるにもかかわらず、「人生の再構成」には至っていない者も多く、実際のライフの再構成にはより時間がかかる可能性が示唆された。また、ライフの再構成が進んでも、症状に悩んだり再発への不安を抱いたりすることは続いており、患者の医療的ケアにおける課題も抽出された。これらの結果は論文にまとめており、投稿準備中である。
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