本年度は、二つの調査を実施した。一つは、3つの県(政令市1箇所を含む)と1市を対象に、前年度と同様の保育所・幼稚園調査、もう一つはこれまでに保育所・幼稚園調査を実施した市区町村の障害児保育・保健施策等の実態調査である。保育所・幼稚園調査については、昨年は研究代表者の行った山梨県調査だけをまとめて報告したが、今年度は、昨年度、研究分担者が収集した東京K区とM市のデータも含め、7つの地域の調査をまとめることができた。詳細は研究報告書に譲るが、分析結果から、注目された点をいくつか示す。障害をもつ子どもが在園している施設における障害児総計の5割近くが発達障害であった。「発達の気になる子ども」についても、回答記述からは、やはり5割前後が「発達障害かもしれない」行動を示していると考えられた。親への支援は、当然、後者のほうが難しくなっている。この研究の中心的テーマであるネットワークという観点から、巡回相談の状況や、子どもが並行通園をしている際の情報交換の実態、連携する機関の種類、連携の課題を地域ごと、都市部と地方、市と町村というクロスで見たが、むしろ見えてきたのは、甲信越にあるN県の連携が密なこと、巡回相談の頻度の高さや満足度の高さなどである。他の地域よりも、障害児保育機関への、保健師や地域療育等コーディネーター、心理職など多様な専門職の支援がある。N県の連携に基づいた施策の存在は、市区町村調査にもみることができた。そのほか、行政と親の会の連携状況の一端も明らかになった。親の会が行政等と連携し、「後輩」保護者の支援の一翼を担うなど、当事者家族の主体的な動きが新たなネットとなっている地域もあった。多様な地域モデルを把握することはできたが、地域モデルの類型化、実践への応用方法の確立は、調査対象の拡大と共に今後の研究課題となる。
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