本研究は、日本のワーキングプアの社会的性格を実証的に明らかにし、その性格に即した地域での自立条件を提示するための基礎的研究を行うものである。1990年代からのワーキングプアを生活保護との関係、不安定就業層労働市場、性別、居住条件の4側面から分析し、ワーキングプアの特徴を捉える。20年度は主に以下の研究を行った。 1.生活保護就労自立支援対象外となったケース(81)の継続分析を行った。その結果、多問題世帯であり男女ともに現在は無業であるが、男性の半数が初職では一般階層であったが、30歳時すでに不安定層の割合が高まっている。女性は無業を経て不安定層になり再び無業化していることが明らかになった。病気、失業、離婚などの生活問題発生時へ着目する必要が示された。 2.重化学工業都市南部地域の検討。先行研究、統計資料から生活を支える基本的条件の整理を行い、あわせて医療機関、社会福祉施設関係者からの聞き取り、学習会を行った。その結果、1960年代中ごろから人口・世帯の減少が始まっているが、90年代中ごろまでは多様な就業機会が地域内に存在したことが示された。重層的下請け構造を当事者の視点から分析することの必要性が明らかになった。 3.2008年9月にオランダを訪問し、改正公的扶助の実際について研修を行った。その結果、ワーキングプアの就労自立を主眼とした政策により公的扶助受給者の減少をもたらしていた。公的責任による雇用創出の重要性を確認した。
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