今年度は、平成12年から平成19年の間に出された民法や成年後見制度に関する文献研究を中心に、精緻にその内容の整理・分析に取り組んだ。その結果、(1)成年後見人にはソーシャルワークの視点が必要であり、成年後見人等の業務遂行とソーシャルワークの実践過程には親和性があること、(3)成年後見制度の理念であるノーマライゼーション、自己決定の尊重、残存能力の活用は、従来からソーシャルワーク実践において重視されてきた理念であり、その理念に基づく実践経験をソーシャルワークは成年後見制度において十分に発揮できることなどが明らかにされていることがわかった。 しかしながら、ソーシャルワーク実践を軸にして、成年後見制度の有効性を検証するものは少なかった。したがって、本研究において、ソーシャルワーカーがどのように成年後見制度を活用するべきかに重きを置いた研究に取り組むことは、成年後見人等として選任されている社会福祉士は全体で2%程度に過ぎない点からも考慮して、意味のあることであると確認することができた。 これらを踏まえたうえで、ソーシャルワークの実践過程を軸に、文献等をとおして整理した成年後見の手続きと身上監護の内容が、ソーシャルワークのもつ機能にどのような影響を与え、ソーシャルワークの機能の強化につながるのかを検証しているところである。 来年度は、この仮説をもとに、事例研究およびヒアリング等を実施していきたいと考えている。
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