本研究は里親支援の方向性に関する基礎的な指針を得ることをねらいとし、都市部(札幌市)の登録里親全数の109名と郡部(札幌市を除く北海道内)の登録里親全数の472名に対し、自記式質問紙を用いた郵送法の調査を実施した。質問項目は、基本属性に関する項目、委託児童との生活に関する項目、情緒的支援ネットワーク認知尺度とした。質的変数の解析については、単変量解析ではχ^2検定を実施し、多変量解析では目的変数を情緒的疲弊度の高低の2群、説明変数をソーシャルサポートの高低として独立性の高い項目を検出した。 単変量解析を実施した結果、郡部では、情緒的支援ネットワーク認知尺度で設定した家族カテゴリーでは10項目中8項目で、里親仲間カテゴリーでは10項目中6項目で、児童相談所カテゴリーでは10項目中10項目で有意差(P<0.05)が認められた。さらに単変量解析で有意差が認められた項目に多変量解析を実施したところ、家族カテゴリーでは2項目、児童相談所カテゴリーでは2項目に有意差が認められた。さらにこの4項目による多変量解析を実施し、オッズ比を算出したところ、「児童相談所カテゴリー」の「気持ちの通じ合う人」の1項目の独立性の高さが示唆された。他方、都市部では全ての項目において有意差は認められなかった。 以上の結果から、郡部の里親の情緒的疲弊(ストレス)は高い傾向にあり、都市部の里親は低い傾向にあることが示唆され、都市部と郡部の地域差が認められた。また、郡部の里親の情緒的疲弊の高低に最も影響を与えた項目は、児童相談所の「気持ちの通じ合う人」であり、児童相談所が家族や里親仲間よりも信頼されていることが示唆された。
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