本年度は医療ソーシャルワーカーの専門性や特徴を捉えるために介護保険を導入しているドイツの医療ソーシャルワーカーにインタビュー調査を行った。さらに我が国の医療ソーシャルワーカーの業務内容より、コンピテンシーの特徴を把握する量的調査を行った。その結果をいかに示す。 (1)ドイツの医療ソーシャルワーカーのインタビューを質的研究より分析を行った。その結果(1)ドイツにおかれている社会情勢(2)ソーシャルワーカーの教育的バックグラウンド(3)所属している組織のミッションと役割(4)これまでの就労経験(5)主に用いている理論、アプローチによって支援方法は異なることが明らかになった。具体的には社会的情勢から影響を受け、組織らの要請として環境調整を主としている社会的側面を強調している者と個人の変容と環境調整の社会心理的側面を強調している者など多様な支援方法が存在し、個人的相違が顕著であった。これはドイツのソーシャルワーク教育のあり方の影響が大きいと示唆された。 (2)本研究は医療ソーシャルワーカーのコンピテンスの構造を捉えるために量的調査を試みた。医療機関で勤務している480人を対象とし郵送調査を行った。質問紙は無記名とした。2010年1月から2月に調査を実施した。質問用紙作成には、医療ソーシャルワーカーによるフォーカスグループインタビュー(FGI)を行い、そこから得られた結果をグループに毎回フィードバックを行った。ソーシャルワーカーに必要な能力に関するブレインストーミングを行い、KJ法でまとめた。職務満足感測定尺度は安達らが職場環境、職務内容、給与に関する満足感測定尺度(1998)を使用した。対象者は女性が8割近く占めていた。年齢は半数が30歳代であった。 勤務年数は5年以上が9割を占めていた。また8割近くが福祉系大学を卒業しており、1割強は大学院を卒業している。さらに、社会福祉士資格取得者が9割近く占めていた。また常勤専従が9割近くいる。労働時間としては全体の9割近くが残業をしており、3割強が50件以上のケースを持っている。職務満足感に関しては因子分析の結果、3因子が抽出できた。(2)ソーシャルワークの専門性に関する知識技術のコンピテンシーは因子分析の結果、3因子が抽出され、因子間の妥当性も証明された。また職務満足感とコンピテンシーは相関があることがわかった。
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