現在、イギリスのホームレス問題は「支援」から「予防」にその焦点を移しているが、これまでの支援の実績から多くの知見が蓄積されている。まず、ホームレス問題は短期・緊急の課題であるとの認識で対策が採られてきたが、長期間の質の高い支援が必要であることが判明してきた。それがホームレス問題への取組みの焦点を予防に移行させることに成っている。そしてホームレス問題の解決には「住居」の提供だけでなく、「サポート」(日常生活技術、依存症、精神障害など)、「社会的ネットワークの(再)構築」(孤立、孤独を防ぐ)、「労働、訓練、教育、その他の活動」(自尊心の構築、新しい技術の習得、日常生活の構築)が必要であることが明らかになっている。 日本のホームレス問題は、2002年の「ホームレスの自立等の支援に関する特別措置法」の制定、施行から第二ステージに入った。この間、第1回「全国調査」、「ホームレス自立支援計画」の策定、実施、そして第2回「全国調査」の実施により、第三ステージに向かいつつある。日本のホームレス問題は失業と同時に住居を失うという場合が多く、就労を通した経済的側面の議論が中心になされてきた。しかしながら2回の全国調査を通して「社会や個人との関係性」(社会から有効な資源を引き出す力)、50歳代後半という年齢による「将来展望」などが生活を立て直すために不可欠であることが明らかになりつつある。 日英のホームレス支援に関する様々な知見は、生活を支える「生活資本」の構成を十分に示唆するものである。
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