本研究では、スピリチュアリティの研究を基底に、知的障害者施設ラルシュのケアワーカーに転じた思想家、神学者、福祉実践家であるヘンリ・ナウエンの「創造的弱さ」「スピリチュアリティ」という概念をとりあげ、その福祉実践思想と実践価値について研究した。 ナウエンの福祉思想は、科学主義、パワーと強さに象徴される現代社会の逆説として、人間そのものの「傷つきやすさ」や「弱さ」のもつ神秘性と逆説的パワーを提起しているが、これまでにない新しい斬新敵な福祉の発想と可能性をもっている。 今年度は、これら一連のナウエンの福祉思想の、解析を中心にして評価していった。これらの研究の第一人者であるロヨラ大学のソーシャルワーク学部のDaniel Lee教授より、昨年に続き特にスピリチュアリティに関する国際動向を踏まえ研究レヴューを受けることができた。 まだ十分に熟成しているとは言いがたいが、そして11月においては、北米キリスト教社会福祉学会において研究発表を行うことができた。キリスト教社会福祉学会やキリスト教神学の雑誌においても、関連する基礎的議論であるスピリチュアリティやキリスト教社会福祉実践の思想の一旦について研究成果を報告することができた。
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