研究概要 |
平成19年度の成果は、地域再生におけるネイバーフッド(近隣地域)レベルのガバナンスの様相を把握できたことである。毎月研究会を開催し、自治体内分権を必要とする理論的背景を考察しながら、最小の自治単位であるネイバーフッドへの権限委譲の動きと、ソーシャルインクルージョンに向けたその意思決定構造を考察した。扱った資料は政府文書Governance of Britain,Exemplars of Neighbourhood Governance,An Action Plan for Community Empowerment,Local Democracy and Neighbourhood Governance,Where's the Money?等である。また2007年10月26日〜11月5日に3名で予備的調査をロンドンで行った。対応をした者は、コミュニティ地方自治省コミュニティ・エンパワメント部主任M.エッカート氏ら、ロンドン・ニューハム区地域再生担当者T.マフーディ氏ら、ロンドン大学R.ルプトン講師、ロンドン大学政経学院A.パワー教授である。調査では、自治体内分権(double devolution)の最新の動向を把握でき、地域再生事業の評価を聴取した。今年度の研究の意義は、ネイバーフッド・ガバナンスと自治体内分権の動向を把握できたことである。ネイバーフッド機能の重要性は、その機能が高まれば利害関係者に住民のニーズ、貧困問題を深く認識させることができ、その解決策への認識が高まることにある。これを財政から捉えてみると、参加型予算編成の試行が注目される。ただし権限委譲には、地域再生事業の持続的な改善、政府機構への市民参画の拡充という課題がある。このように住民との協働、小地域での自主的活動等を含めたネイバーフッド・ガバナンスの進展はわが国の地域再生に大いに参考になると思われる。
|