平成21年度は、それまでに明らかにした知見を基に1つのまとめと1つの調査を行った。 1)大韓民国の高等教育機関における社会福祉教育の現状に関する研究のまとめ。主に、日本とことなりアプリオリになされており、社会福祉教育と「生と死」教育が同じ遡上にあるという点を明確にした。(「短報」として平成22年度に成果を明らかにする予定) 2)特別養護老人ホームの待機者を対象にした量的調査のまとめ。分析の結果、第1に現状への苦しみや施設への不満感は、待機者自身の年齢や待機年数または、申込時からの状況の悪化等によって生じるのではなく、現在のADLや要介護度によって規定されることが明らかになった。第2に待機者が身近な人に相談する様子がなく、また周囲の人からの手助けを積極的に受け入れないといういわば「孤独で孤立した状態」は、介護者に「苦しみ」を与えている。その上で、加齢を受容できず老いことを拒否している場合や、さらに認知症の悪化、ADLの低下がある場合、待機者本人も「苦しみ」を感じているといえよう。介護者は、さらに待機者が専門機関の利用を拒否している場合、待機者自身は現状を好転させようという意欲が非常に低い。このような待機者を抱える介護者は、待機中、特養からのサポートをほしいと感じていることが明らかになった。現在の要介護といった情報は、客観的な状況として明確である。一方、現在のADLは、一見、客観的ではあるが、ある程度、経験を重ねた生活相談員や介護支援専門員が、自身の目で確認すべきであるとは考えられる。重要なのは待機年数を減らすということではなく、施設が客観的には必ずしも捉えきれない、待機者自身の現在の状況を捉えることである。そのことが待機者の不満の軽減に結びつくと結論づけた。(「原著」として平成22年度に成果を明らかにする予定)
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