本年度の研究成果として、九州圏内における、がんターミナル期に活用される社会資源情報、事例の収集を行った。特に、福岡県内に焦点を当てがんに関わる医療計画の検証及び医療供給体制、事例の分析を行った。 分析の結果、福岡県内における「がんによる死亡数」「がんによる死亡率」ともに増加の一途を辿っており、がん対策基本法が制定されたにも関わらず、死亡数、死亡率の改善に至っていないことが示された。 さらに、福岡県内の二次保健医療圏別に医療供給体制の分析も行ったが、全体として総病床数は減少し、一般病院数も減少しているにも関わらず、一般病床数は増加しており、一般病院の吸収合併及び療養病床の一般病床への転換など、一つひとつの医療機関の大規模化が進行している。 このような状況の中で、医師数及び看護数も増加しており、都市の中心部に医療機関及び医療従事者の集中化が生じている。しかし福岡県周辺領域においては、ベット数及び医療従事者数は減少しており、医療機能の都市集中化及び医療機能の偏在が生じている。緩和ケア病棟数についても、都市集中化しており、がんターミナル期を支える医療供給体制が偏在している状況下において、医療ソーシャルワーカーは、一般病院の中で、在宅でのターミナル期を支えるネットワーク作りに奔走している状況も示された。
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