研究概要 |
少子高齢社会では多世代が共存・協力してコミュニティを形成することが重要である。異世代間の日常的な交流は著しく減少し,意識的・意図的な配慮によって多様な人間関係を構築する機会を設定しなければならない事態となっている。近年,学校教育では「総合的な学習の時間」や学校ボランティアなどによって世代間交流活動が行われている。その大半はイベント的なもので,日常的な交流や「なじみの関係」への発展は困難である。本研究は日本の学校における世代間交流活動の質的向上を図るために,子どもを支援する高齢者の事前研修・スキルアッププログラムを作成することを目的としている。そこで,義務教育学校に高齢者を派遣する事業(Klassmorfar;クラスダディ)を実施しているスウェーデンのプログラムを対象として研究に取り組んだ。2007年8月,スウェーデンにおいてクラスダディを導入している学校の実地調査と子どもや教員,クラスダディおよび研修担当者,事務局メンバーへのインタビューを行った。クラスダディはストックホルムのナッカ地域で1996年に開始された事業で,現在は69の県における163の市町村で導入されており,566名が活動している。クラスダディの認定には2ケ月間の研修があり,1ケ月間の試用期間を経て正式採用となる。研修の受講にもクラスダディ事務局による面談と選抜がある。研修は教育学や心理学,子どもの発達や問題行動,学校組織や教職員の役割,身体による意思表示などの内容で構成されており,グループ活動や実習も組み込まれている。クラスダディの効果として,子どもが精神的に安定し,教師の負担が減少するとともに,学校と保護者の連携強化が挙げられた。
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