研究概要 |
従来の犯罪不安研究は個別的であるため,犯罪不安,後悔予期などのような感情的要因,リスク認知やコスト要因などの認知要因,リスク回避行動や対処行動,および司法,行政,警察,マスコミに対する意識などの全体の関連性が不明であった。よって本研究ではこれら要因の全体の関連性をパス解析によって検討した。 首都圏のT大学およびS大学の学生138名(男性79名,女性57名,不明2名)に対して,2011年1月に質問紙は配布回収した。質問項目は,犯罪不安(一般的犯罪,性犯罪,被害者になった場合,司法・行政などに対する不安),リスク認知(一般犯罪,性犯罪リスク),コスト認知(心理的,金銭的),後悔予期,リスク回避行動(回避行動,対処行動),事件に対する認識(再犯の可能性,被害者の心の傷),加害者の更正(謝罪,事件を省みる)司法(刑罰の重さの不満,厳罰化,加害者の人権制限,被害者への情報提供),行政(防犯,加害者矯正,被害者救済),警察への要望,マスコミ(被害者プライバシー保護,マスコミへの不信感,防犯情報提供)などからなり,5段階で評定した。 パス解析の結果,リスク回避行動を規定するパスには,認知的プロセス(犯罪不安→リスク認知→コスト認知→回避行動)と感情的プロセス(犯罪不安→後悔予期→回避行動)が存在することがわかった。そのほかの特徴的な結果として,犯罪不安が司法や行政等に及ぼす影響に関しては,犯罪不安→事件に対する認識→司法&行政(司法・行政に対する不安が高い人ほど,加害者が再犯する可能性が高いと評価し,そのため厳罰化や加害者の人権の制限をもとめたり,加害者を矯正すうシステムの構築を求める)という関連性があることがわかった。
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