災害や戦争で多数の人々が死亡するような事態が発生した場合、しかもその原因を特定することが難しい場合、人は明確な原因(責任の所在)を見出すべく努力するような志向性を持っている。そして責任所在のターゲットとして最も選択されやすく、また人々のフラストレーションを解消しやすいのは特定の人や組織集団である。次々にスケープゴートが変遷することはJR福知山線の脱線転覆事故でも明らかである。この事故では非難の対象が運転手、車掌、慰安旅行やボウリング大会に参加した社員、事故当日夜の酒宴に参加した代議士、暴走行為をした社員、社員を殴った乗客、JRに寿司の代金を要求したマンション住民、JRを糾弾した新聞記者、過密ダイヤを作ったJR当局、それに社会の風潮等々あって枚挙の暇もないほどだった。本研究ではこのようなマスコミ報道と報道する側のステレオタイプやスケープゴーティングの関係について検討した。
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