研究概要 |
本年度は,フォロワーの自己概念を変化させることのできるリーダーシップ行動を明らかにするため,平成19年度と20年度の結果に基づいて,フォロワーの自己概念をあるレベルから別のレベルに変化させるための働きかけのパターンを構成し,その有効性を検討することを目的としていた。変革型リーダーシップの4要素のうち,個人に対する働きかけ(知的活性化・個別的配慮)と集団に対する働きかけ(カリスマ性・志気を高める動機づけ)が,フォロワーの個人的・関係的・集合的自己概念を変容させるかどうかを実験室実験によって検討した。その結果,(1)志気を高める動機づけは集合的自己を顕現化し,関係的自己を低下させること,(2)個別的配慮は個人的自己を顕現化すること,(3)知的活性化は関係的自己を顕現化し,個人的自己を低下させること(討議課題だったため),が明らかになった。さらに,(4)集合的自己はメンバー(集団)愛着に,個人的自己は尊重感に,関係的自己は討論モチベーションに結びつくこと,が明らかになった。課題の性質に左右される可能性はあるが,志気を高める動機づけが集合レベルの自己概念を介して集団愛着を高め,個別的配慮行動が個人レベルの自己概念を介して尊重感に結びつくこと,知的活性化が関係的自己を介して相互作用課題へのモチベーションを高めることが示された。なお,カリスマ性(自己犠牲)については,リーダーへの同一視を高める可能性が示唆された。これらは,特定のリーダーシップ行動がフォロワーの自己概念を介して成果に結びつくプロセスを明らかにした点で重要な知見である。
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