研究概要 |
自己と女性に対するステレオタイプの適用や偏見について,以下の研究をおこなった. 現代女性は伝統的性役割に関する自己表象も非伝統的な性役割に関する自己表象も,どちらも持っていることが指摘されている.そこで,状況によってどちらかの自己表象がより強く活性化することになり,その活性化の違いが,他者に対するステレオタイプ化や偏見の相違を生み出す可能性を実証的に検討した.女性参加者に対して,将来の自己のイメージングにより自己表象を操作し,伝統的女性と非伝統的女性に対する対する印象を測定した.結果として,非伝統的女性に比べ伝統的女性が自己表象に組み込まれた時にはステレオタイプ的な印象を持つことが示された. 重要他者と考えられる恋人に関する表象の活性化が,女性参加者の自己ステレオタイプ化とジェンダーに関連する行動に及ぼす効果を検討した.ジェンダーに関連する行動としては摂食行動を取り上げ検討した.具体的には恋人(vs.空欄)を閾下プライムした後,ジェンダー関連特性語に対する自己評定と,その測定の間に自由に食べてよいと教示しておいたクッキー等の摂取量を測定した.結果として,恋人概念を閾下プライムすると,女らしさ概念が活性化し,摂食量が低下することが示された.この結果は,恋人概念が活性化すると,自己を伝統的女性として捉えるようになり,その結果として女性らしさを示そうという自己呈示目標が活性化するため,伝統的な意味での女らしさを示す行動が取られやすくなることを示唆している.
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