研究概要 |
男性と女性の双方が示す自己と他者に対するジェンダー・ステレオタイプ適用と性役割的偏見について,1)ジェンダーカテゴリーの活性化がジェンダー・ステレオタイプの活性化に及ぼす効果,2)システムに対する脅威が性役割的偏見に及ぼす効果,について実証研究を行った. 実証研究の成果として,1)-1男女が独立したカテゴリーではあるが共通のカテゴリーに含まれることをプライムされた参加者は,男女が独立したカテゴリーであることのみをプライムした参加者や,男女が共通のカテゴリーに含まれることのみをプライムした参加者に比べて,男性では,潜在的な「女性は共同的/男性は作動的」というジェンダー・ステレオタイプの活性化が強まることが示された.この結果は,社会的アイデンティティ理論において集団間での偏見を低下させるというポジティブな効果を持つとされた状況が,相補的なステレオタイプ化を強めるというネガティブな効果を生み出す可能性を示唆するものである. 2)-1日本の脅威となる外集団を顕現化すると,男性では伝統的性役割女性に対する結婚相手としての魅力が高まることが前年度とは異なる参加者において見いだされた.この結果は,ステレオタイプがシステム正当化機能を果たすことを再度確認するものである. 3年間の実証研究を受けて,性役割的偏見とジェンダー・ステレオタイプの機能の整理を行い,その機能を必要とする状況における顕在的/潜在的なステレオタイプの活性化および性役割的偏見の強化について理論的検討をおこなった.
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