研究概要 |
本年は,はじめにわが国における孤独死の定義や発生状況に関する検討を行った.新聞・雑誌記事データベースの探索の結果,1970年代はじめ頃から高齢者が自宅内で死亡するケースが孤独死として単発的に報道されてきたが,阪神・淡路大震災(1995年)以降は,自宅を追われた高齢者が仮設住宅で亡くなる「災害型」の孤独死が,メディアで多く取り上げられるようになったことが明らかとなった.さらに近年は,家族とのつながりや地域コミュニティーから取り残された独居者が,自宅内で死亡後,しばらく発見されずに放置される「都市型」の孤独死が,わが国の今日の高齢化問題のひとつとして着目されていることも明らかとなった. さらに本年は,孤独死予防への先進的な取り組み地域(千葉県松戸市常盤平団地)で,過去7年に孤独死の疑いありとして団地内社会福祉協議会に通報があった事例への対応記録を分析した。すなわち,各事例の通報者(第一発見者)の属性と各事例の顛末との関連を検討したところ,通報者が被通報者の親族である場合は,ほとんどが死亡事例(孤独死ないし自殺)であった.これに対して,被通報者のインフォーマルなネットワーク員(友人や隣人など)が通報者の場合は,孤独死の割合が減り,死亡前に発見救助に至るケースが増えていた.民生委員などフォーマルなネットワーク員が通報者の場合も孤独死に至るケースは少なかったが,留守や睡眠中など,誤報のケースも多くなることが明らかとなった.これらの結果は,孤独死への早期対応や判断の確実性を増すうえで,インフォーマルな対人ネットワークの強化が重要であることを示唆するものである.
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