研究概要 |
「うつ」に関する日本の大学生の日常言語によるしろうと理論を抽出するために,首都圏の2校の大学生から313名(男性167名,女性143名,不明3名,平均年齢19.82±1.22歳)のデータを得た.大学生は,「うつ」「うつの人や人びと」「うつの原因や理由」「うつの性質や特徴」「うつの軽減や治療」のそれぞれについて,文章完成法によって回答した.「うつ」についての回答を分析したところ,意味をなす構成要素数は,1204であった。各構成要素の出現頻度が5以上の記述を抽出したところ構成要素数は108であり,これを分析対象とした.構成要素度数の高かったものは,「病気」「心」「暗い」「やる気」「つらい」「なくなる」「治る」「病」であった.対応分析の結果は,3つの大きなクラスターを生み出した.それらは,「うつの性質や特徴」にかかわる記述(「いや」「こわい」「イメージ」「治らない」「性格」「精神病」),うつになることにかかわる記述(「うつの原因や理由」にかかわる記述)(「かかる」「なく」「なりやすい」「ひきこもり」「カウンセリング」「ストレス」),「うつの人(びと)の特徴」にかかわる記述(「できない」「一人」「解決」「なやみ」「問題」)と解釈された.「うつの軽減や治療」は,大きなクラスターとしてまとまることはなかった.第1クラスターのなかに,うつは「治らない」という,科学的知識には一致しない記述が見られている.
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