(1)本研究は、スティグマ化されたリスクに対する市民評価の心的過程を、感情反応と心理的公正に関するヒューリスティックを中心に、実験と調査を組み合わせて解明するものである。目的1は、感情反応および心理的公正がリスク知覚時のヒューリスティックとして機能しうることを実験的に示すことである。目的2は、感情と公正のヒューリスティックを含めたリスク知覚の心的過程をモデル化し、市民を対象とした調査により検証することである。本研究は、これら2つ目的を達成することにより、リスクコミュニケーションやリスク政策上の基盤的知見を得るとともに、市民のリスクリテラシー向上の方法を開発する手がかりを付与するものである。 (2)本研究が期間内に明らかにしようとする内容は、以下の4点である。 (1)暗黙連想法(IAT)を用いた反応潜時実験を大学生を参加者として行い、スティグマ化されたリスクの知覚において、感情反応と直感的公正感がヒューリスティックとして機能しうることを示す。 (2)上記の実験結果から、感情ヒューリスティック・公正ヒューリスティックの言語化された測定指標を作成する。 (3)スティグマ化されたリスクの評価に関する市民の心的過程を潜在構造モデルとして構築し、有権者を対象とした調査データで検証する。 (4)モデルの検証作業を通じて、スティグマ化されたリスクに対する市民の評価・受容・理解に影響する要因を、感情・公正ヒューリスティックを含めて検討し、市民に対するリスクコミュニケーションのあり方、市民のリスクリテラシーを向上させる手法の開発に示唆をあたえる。
|