研究概要 |
本研究の目的は、関係性としての自己という視点から、自己の形成を、対人的・文化的・時間的文脈から総合的に検討することである。平成19年度は(1)主語の相違が自己概念の状況即応的組織化に及ぼす影響の実験的検討、(2)他者概念の複雑化(others-complexity)測度の開発、(3)文化的文脈の影響の検討の準備、以上3点を実施した。 (1)について:自己記述の際に使用する主語の様態と対人状況の様態の相互作用を検討すべく、先ず日本において実験を行った。対人状況は集団状況のみで、主語の様態(「わたし」・「固有名詞」)を独立変数とする、一要因実験を行った。その結果、固有名詞条件のほうが自己記述において、信条、性格特性、目標などの内的属性に関する記述が多く認められた。このことは、(1)日本においては内的属性に関する記述がアメリカより少ないというこれまで主張されてきた「文化的差異」を再検討する必要があること、(2)自己概念の組織化は「主語」という要因の関数であること、を示唆するものである。(2)について:他者概念の複雑化は、(1)2種類の他者概念複雑さ測度の開発と、(2)自他の視点の相対化に関する測度から検討した。(1)については、convoy方式など、cognitive mapを記述する方法を収集している過程である。 (2)については、社会的かしこさ測度(白樫ら、2003)を再検討し、質問項目のワーディングを行った。 (3)について:文化的文脈を検討するため、Cross, S.E.(Iowa State Univ.)と調査実施時期や方法等について協議中である。
|