研究概要 |
【目的】わが国の自殺をめぐる状況は、時代とともに質的に変化を遂げており、メディアの言説がそれを反映している可能性は高い。つまり、自殺をめぐる言説についての内容分析は、従来「自殺に対する偏見」と呼ばれてきた内容も視野に入れつつも、より広く、わが国における自殺の社会構成的な側面を明らかにするアプローチである。本研究では、新聞報道の内容分析から、自殺問題の構造を明らかにすることにより、わが国における自殺問題のありようについて考察することを目的とする。 【方法】データ収集には、各新聞社の提供する電子記事検索サイト(朝日新聞:聞蔵II、読売新聞:ヨミダス文書館)を使用した。データベースで記事の検索が可能であった1985年から2006年の記事のうち、一面の見出しに「自殺」の語が含まれているものを取り出し、記事の見出し文のみを分析対象とした。分析対象とした見出しは朝日新聞では79件、読売新聞では114件であった。分析にはテキスト型データ解析ソフトウェア「Word Miner」(日本電子計算株式会社)を用い、テキストマイニングを行った。なお、分かち書き処理には、Happiness/AiBASE(平和情報センター)が採用されている。 【結果と考察】朝日新聞、読売新聞において抽出されたクラスターの内容を比較したところ、両紙で類似した結果が得られることが明らかになった。たとえば、第5クラスターは、自殺報道において使用される語のうち、特定の状況で用いられるキーワードから構成された。これは犯罪を起こした容疑者の自殺に関する記事の場合であり,自殺手段が見出しに明示され,自殺を図る、死亡するという表現が用いられる。これらの内容的検討から、新聞記事の一面見出しにおける自殺報道は、おおまかに、いじめ,犯罪者,過労,実態および経済的動機、汚職事件、集団自殺の6つのカテゴリーによって構成されていることが示唆された。
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