一般に、自閉症児、ADHD児の社会性発達支援としては、「集団からの逸脱行動を減少させる」「保育者の指示を受け入れる」などといった適応を目指すものが多い。いわば、他者からの刺激を受動的に受け入れ、集団に適応し、安定的に生活していくことが重視されていたと言える。しかし、自閉症児、ADHD児は単に刺激を受容するだけの存在ではない。むしろ、他者 に対して積極的に働きかけうる存在だと考えられる。また、このような向社会的行動は他児からの肯定的評価を生み出し、仲間関係を形成することに寄与すると考えられる。このような観点から、本研究は、保育の場における自閉症児、ADHD児の向社会的行動の発達を明らかにするとともに、自閉症児、ADHD児の向社会的行動が他児との仲間関係の形成、発展にどのように影響を及ぼすかという点について検討することを目的とした。 平成19年度は、6か所の保育所においてVTRを用いて、行動観察を実施した。具体的には、保育所における自閉症児、ADHD児、「気になる」子どもを抽出し、「朝のあつまり」場面における行動観察を実施し、自閉症児、ADHD児の向社会的行動の生起頻度と状況を記録した。その結果、(1)当番活動などの場面では、自閉症児、ADHD児、「気になる」子どもは、他の日常的場面よりも適応的に振る舞うこと、(2)自閉症児、ADHD児、「気になる」子どもの向社会的行動は他児にとっても認めやすいこと、(3)他児からの肯定的評価は、自閉症児、ADHD児、「気になる」子どもにとっても肯定的に受け止められることが明らかになった。
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