研究概要 |
今年度は,H20年度入園児の縦断調査(H20年〜H22年)のための予備調査を行った。研究1では,家庭から社会への環境移行期にある3歳入園児を対象に,人的環境としての「仲間」・「教師」の2つの側面に注目し,幼児の社会的スキルと関連があるか否かを検討した。その結果,保育者ごとに社会的スキルの評定に関して,(3)協調,(4)注意・多動,(5)引っ込み思案,の3側面に関して,保育者間の差異が示された。保育者Aは保育者Bよりも,(3)協調の評価平均得点が低く,(4)不注意・多動,(5)引っ込み思案の評価平均が高い。これらの結果から,保育者の保育観や発達観によって,子どもの社会的スキルの評価基準が異なることが示された。次に,これら幼児の社会的スキルに関する教師の評価基準の差異が,「保育者-子どもの関係」,「仲間関係」と関連があるか否かを検討した結果,保育者によって,社会的スキル評定と保育者-子どもの関係,仲間関係が異なることが示された。まず,保育者Aに関しては,自己統制できると評価している子どもほど,子どもと保育者の親密性は低いが,仲間関係が安定し良好であること,不注意・多動であると評価している子どもほど,子どもと保育者の親密性が高く,仲間から友だちであると認知されていない傾向があることが示された。一方,保育者Bは,引っ込み事案であると評価している子どもほど,子ども-保育者の親密性が高く,仲間から友だちであると認知されていない傾向にあることが示された。以上の結果から,保育者の社会的スキルの評価基準の差異は,保育者-子どもの関係,仲間関係の質と関連していることが示された。保育者によって社会的スキルの「気になる側面」が異なり,これが子どもとの相互作用に反映されている。また,保育者が気になる「社会スキル」の側面は,仲間関係とも関連しており,環境移行期における「保育者」「仲間」といった人的環境は,社会的スキルの獲得に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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