研究概要 |
本年度は, 環境移行期の幼児の向社会性の発達と社会化の過程を明らかにするために, H20年度3歳入園予定の幼児を対象とし, child×environmentモデルを基に, (1)入園以前の家庭での社会化(養育態度・育児サポート・母子分離), (2)仲間・教師との相互作用(仲間との相互作用スタイル・仲間関係・子ども-保育者の関係), (3)向社会性の個人差(向社会性についての価値観・効力間), (4)年度末における社会化の達成度(社会的スキル)を検討した。その結果, 移行期初期に母子分離がスムーズな幼児は, 移行期前半(4-13週)で友だちからの攻撃行動が少なく, 移行期終期には良好な仲間関係を形成しており, 母子関係→仲間関係という移行過程が示された。対人行動に関しては, 移行期前半で自発的に友だちの困窮場面に介入し援助を行った幼児は, 移行期終期には良好な仲間関係を形成し, 向社会的な効力感が高かった。一方, 依頼に応える介入は仲間関係や向社会性と関連がないが, 教師-子の関係に負の相関があった。以上の結果から, 困窮場面における自発的介入と依頼に応える介入は異なる機能を有し, 移行期においては, 『困窮場面への自発的介入→仲間関係→向社会的な効力感』という社会化の過程が示唆される。一方, 移行期前半で攻撃行動が多い幼児は, 移行期終期の向社会性(価値観・効力感)は低く, 終期で良好な仲間関係が形成されていない幼児は価値観が低いことが示された。以上の結果から, 向社会的な価値観と効力感の形成過程は異なり, 移行期においては『攻撃行動/仲間関係→向社会的な価値観』という社会化の過程が示唆される。また, 保育者は, 依頼に応える介入が多い幼児に対して意図的な関わり方をしており, 『仲間集団での援助依頼→保育方針・経営』という環境構成過程が示唆される。
|