入園後の幼児の生活を、家庭から園への「環境移行期」、幼稚園での「適応期」、園から小学校への「移行準備期」の3つの段階から捉え、本年度は、「移行準備期」の向社会性の発達と社会化の過程を検討し、縦断分析を行った。幼児期において向社会的行動と攻撃行動の出現数、仲間関係調査の結果に年齢差はみられなかった。各年度内、年度間の相関係数を算出した結果、3歳から5歳にかけて各年齢の間に、困窮場面での向社会的行動による改善経験は関連がないことが明らかになった。3歳から5歳にかけて、幼児は、改善できた経験のみによらず、向社会的行動を学習し、相互作用の中で縦断的に獲得していると考えられる。また、3歳から4歳にかけての時期は、無視・拒否(無反応)が多く、向社会的行動と仲間関係との関連もないことから、困窮場面を理解して向社会的行動の方略を学習していく発達の段階であると考えられる。しかし、3歳の頃に困窮場面で無視・拒否(無反応)されていた幼児は、4歳時点でも無視・拒否(無反応)され、攻撃をうけるようになった。つまり、3歳で自分の困窮場面に遭遇していた幼児は、4歳になって集団の中で弱者の立場にあることが示唆される。3歳から4歳にかけて仲間関係は安定しておらず、攻撃などの自発的な働きかけで変化していることが窺えた。5歳で友だちの困窮場面を改善できる幼児は、4歳の頃に被指名が多い幼児であり、同時に他児に対して攻撃をする幼児であった。4歳で友だちに対して無反応であった幼児は、5歳で友だちから無視・拒否(無反応)をうけるようになった。また、4歳で無反応を受けていた幼児は攻撃をうけるようになり、このことから、3歳から5歳にかけて弱者の立場になる幼児が固定化していることが窺えた。また、4歳の頃の困窮場面における態度が、5歳での仲間関係の形成に影響を与えていることが示唆された。
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