3年間の研究目的は、(1)注意、(2)同時処理、(3)継次処理、(4)プランニングの4つ下位検査から構成される幼児用(4〜6歳)の神経心理学的検査を作成し、その健常幼児での標準化と発達障害幼児における有効性を検討することである。平成19年度は上記の4つの下位検査の内容について検討した。本年度は、前年度に引き続き、これら4つの下位検査の内容についてさらに吟味すること、さらに注意システムの検査のうち、視覚性の持続的注意検査について検討した。具体的には、「のるぷろライトシステムズ」が開発したADHDテストプログラム『もぐらーず』を4〜6歳の健常幼児67名(4歳児:18名、5歳児:28名、6歳児:21名)に実施し、各年齢について、(1)正答率、(2)反応時間、(3)見逃がし率(omission error)、(4)お手つき率(omission error)を求めた。その結果、年齢が高くなるにつれて正答率が増加し、反応時間・見逃がし率・お手つき率が減少した。また、正答率とお手つき率で性差が求められ、正答率は女性の方が高く、お手つき率は男子の方が高った。この結果から女子の方が男子よりも注意の集中がよいことが明らかとなった。さらに、ADHD(注意欠陥多動性障害)と診断された学童21名(1‐2年生:12名、3‐5年生:9名)に対して『もぐらーず』を実施し、健常対照と比較検討した。その結果、正答率・反応時間・見逃がし率・お手つき率のいずれにおいても両群間に有意差は認められなかった。今回はADHDと診断された児童を対象としており、タイプ別(不注意・衝動性のタイプに分けて検討することが必要である。
|