3年間の研究目的は、(1)注意、(2)同時処理、(3)継次処理、(4)プランニングの4つの下位検査から構成される幼児用(4~6歳)の神経心理学的検査を作成し、その健常幼児での標準化と発達障害幼児における有効性を検討することである。本年度は幼児用の聴覚性持続的注意検査と選択的注意検査を作成し、4歳9名、5歳11名、6歳10名を対象に年齢的な変化を検討した。聴覚性持続的注意検査は、(1)「楽器」(あらかじめ5種類の楽器の音を2分間録音しておき、特定の楽器の音が聞こえたら手をあげるという課題)と(2)「お話」(「ももたろう」と「さるかにがっせん」の話を2分間録音しておき、それぞれ標的となる言葉が聞こえたら手をあげるという課題)の2つの下位検査からなる。選択的注意検査は、「動物ストループ」という検査を新たに作成した。この検査はB4用紙3枚の刺激図版よりなり、1枚目では実物大に対応した動物のペア(20組)が描かれた図版を呈示し、それぞれの動物の名前を聞き、2枚目では口頭で動物のペア(33組)を言い、どちらが大きいかを尋ね、3枚目では大きさがランダムな動物の絵のペア(33組)を呈示し、大きい方に○をつける。3枚目についてはスピードを要求し、所要時間と誤りを記録する。これらの検査を4~6歳児に実施した結果、聴覚性持続的注意検査の「楽器」および「お話」、選択的注意検査の「動物ストループ」は4歳から5歳にかけて正答数の有意な増加を示した。ただし、5歳から6歳にかけては、聴覚性持続的注意検査の「お話」だけが有意な増加を示した。これらの結果から、持続的注意と選択的注意の4歳から5歳にかけての発達的な特徴が示唆された。
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