研究概要 |
H20年度では,社会道徳的志向性としての「自愛の思慮(prudential)」が青年の自己認知の中でどのように出現し,心理的健康とどのように関連するのかについて調査した。 研究1:青年の生き方と自愛傾向の自己認知 「自愛の思慮」とは自分の行動が直接的,間接的にブラス(マイナス)の結果になって自分に戻ってくることを予期する認知であり,社会的領域理論(social domain theory)における個人領域(personal domain)の機能のひとつである。研究1は,大学生を対象に,「自愛」の構造を分析することを目的とした。まず,予備調査として,「生き方」に関する質問項目を集め,調査票を作成した。そして,大学生348名を対象に調査し,「生き方」の中に自愛の生き方がどのように出現するか分析した。その結果,生き方は「自己向上的自愛」「保身の自愛」「道徳的無力感」の3因子構造であることが見出された。尺度の信頼性と妥当性も確認された。 研究2:道徳的自律,自愛と心理的健康との関連 生き方が,親子葛藤場面での道徳的自律と心理的健康にどのように関連しているかについて分析することを目的とした。大学生256名に生き方尺度とUPI尺度,自尊感情尺度,自己肯定感尺度を実施した。その結果,自由観のの肥大した大学生ではUPIでの呼び出し基準に該当する者が多く,道徳的無力感に陥る傾向も高いことが示された。「保身の自愛」「自己向上的自愛」は道徳的自律,および精神的健康とは有意に関連していなかった。 これらの結果は,道徳的自己の発達の観点から考察された。
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