【研究の目的】近年、学校コミュニティを舞台とした事件・事故が多発しており、こころのケアを目的とした緊急支援の必要性が高まっている。そこで、本研究では緊急支援に対応できる教職員およびSC養成の研修プログラムの開発を目的とした調査研究を行った。 【結果と考察】研修プログラムには以下の3領域を含むことが効果的であることが示唆された。(1)理論的基礎の習得:緊急支援時に、個人・集団にどのような反応が生じるのかについての知見などに関する理論的理解が有用であった。また、具体的にどのような動き方をすればよいのかについてのある程度概念化された手順の提示も役立った。(2)過去の事例を学ぶ:過去に生じた事件・事故について、その時どのようなことが起こり、どのような対応を行ったのかについて「事例を通じて」学習することが有効である。過去の事例と全く同じ状況が発生することはないにしても、そこから抽象度を上げて自分あるいは所属する機関であればどのようなことが起こりえて、そしてどのような対応が可能であるかをシュミレーションすることができるからである。(3)事例を用いた演習:さまざまなモデルケースを用いて受講生が実際に緊急支援の演習を行うこともきわめて有効である。 【終わりに】今後の検討点として、(1)研修のタイミングやサイズ、(2)緊急支援の体制作り、(3)危機が発生しにくい学校経営、(4)受講生の代理受傷への配慮、といった点があげられる。
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