本年度はまず、発達障害児・者に関わる人々の障害受容・障害理解に関する先行研究のレビューを進めた。その際、研究論文のみならず、発達障害に関わる人々の手記が記載された書籍も調べた。また、研究代理者がこれまで心理面接などで接してきた、発達障害児・者の保護者、教師、保育士などが語ったことについても整理を行った。 その結果、軽度発達障害に関しては、明らかな知的障害がないこともあって、障害であることを認めづらい、あるいは、本人の行動・特徴をどのように理解したらよいかわからないなど「わかりづらさ」があるゆえに、当事者に関わる保護者や教師などにとっては、困惑、イライラなどの感情が生じやすく(一時的でなく断続的に)、そうした感情が本人への対応にも影響を与えているケースが多く見受けられた。そのほかに、当事者の発達段階の違いによって、障害受容における葛藤の内容に違いが見られることや、保護者においては当事者の障害を理解し受け入れようとする過程で、当事者に関わる他の人々(教師や保育士、近所の人など)の反応が影響を及ぼしていること、また、教師においては当事者のニーズに応じようとすることと教師としての職業的アイデンティティとの間に葛藤が見られることなどが示唆された。これらのことは、他の障害における理解・受容には見られない軽度発達障害に特有のことであると考えられる。これらのことをふまえて、保護者、教師、保育士を対象とした面接調査の質問項目の検討を行った。
|