研究概要 |
初年度である本年度は、スクールリーダーのアセスメントに関する理論的研究と基礎的研究を行った。 理論的研究については、まず基礎として学校組織にとらわれない集団・組織一般におけるリーダーシップの問題を取り上げて、文献収集を行い、先行研究をまとめて、現在のリーダーシップ研究の動向を明らかにした。そして、それらについては、リーダーシップ全般に焦点を当てたものとして、「社会心理学におけるリーダーシップ研究のパースペクティヴI坂田桐子・渕上克義(編集)京都:ナカニシヤ出版」を著書として公刊した。 また、スクールリーダーのリーダーシップについては、岡山市で外部講師を招いて12月と2月に二回研究会を行い、先行研究をまとめた。特に、スクールリーダーのアセスメント能力に関する欧米の先行研究を収集し、これまで明らかにされてきた研究成果を整理するとともに、本研究課題で検討すべき点を明らかにした。 次に、基礎的研究においては、スクールリーダーのアセスメント尺度を作成し、管理職を対象として調査を行い、校長用と教頭用の二つの尺度を開発した。これらの研究を「学校管理職の対教師評価観の認知構造に関する研究」として、岡山大学教育学部研究集録第137号にまとめた。本年度の研究成果から、学校管理職である校長と教頭がそれぞれ所有している対教師の評価観に関する認知構造が実証的に明らかになり、経験のみに頼らない客観的かつ多様な評価基準を学校管理職に意識させることにより,教師個々の特徴に十分配慮した適切なアセスメントが可能になることが示唆された。さらに、スクールリーダーのリーダーシップと学校組織における教育相談活動の定着化の関係について実証的に検討した。分析の結果、彼らの変革型リーダーシップが学校の組織システムに影響を及ぼし、配慮的リーダーシップが協働的な職場風土に及ぼし、それぞれが定着化に影響を及ぼしていることが明らかになり、リーダーシップのタイプにより異なる効果がもたらされることが明らかになった(西山・渕上・迫田,投稿中)。 次年度以降は、まず第一に、今回開発したアセスメントスケールを用いた効果的な研修のあり方について検討していく予定である。第二に、スクールリーダーの対教師評価に中でも、課題遂行に直結した業績評価だけでなく、文脈業績に焦点を当てて、スクールリーダーによる文脈的業績の評価の認知構造について実証的に検討する予定である。
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