研究概要 |
本研究は,教師の勇気づけ実践が児童の学級適応過程に及ぼす影響を実験的かつ事例研究的に検討することを目的とした。研究の最終年度の平成21年度は、平成20年度と同様の手続きで現職教員(計4名)に新規に勇気づけトレーニングを行い,勇気づけ実践学級(3年1学級,6年1学級)と統制学級(3年1学級,6年1学級)の間の児童の学級適応に関する各測度の差異を検討した(児童数計112名)。 勇気づけトレーニングは,従来と同様に9セッション計20時間を要した。教師には,トレーニング終了時点から,各自の学級で勇気づけを実践するよう求めた。学級適応,学級雰囲気,教師期待の認知等の各測度は,実践前,実践中(1ヶ月経過時),および実践後に質問紙(小冊子)を配布して測定した。 分析においては、まだ標本数が十分でないため従来のデータも加え、学級単位のデータと児童個人単位のデータについて,条件(実践学級vs.統制学級)×測定時期(実践前vs.実践中vs.実践後)の2×3の2要因分散分析をそれぞれ実施した。その結果,学級単位データの「教師期待の認知」測度において交互作用が有意であった(F=5.32,df=2/36,p<.05)。下位検定を行うと,実践前と実践中の両学級間の評定値には差がないが、実践後においては実践学級の方が認知得点が高いことが認められた。児童個人単位のデータの「教師期待の認知」でも有意ではないが同様の傾向が見られた。 これらの結果は,勇気づけ実践が児童の学級適応過程に肯定的な効果を及ぼすことを部分的に示しており、勇気づけ実践の教育への適用可能性はかなり大きいといえる。なお、本研究では、実践学級の抽出児6名の「学級および教師に対するイメージ」の変容過程と、担任教師2名の「勇気づけに対するイメージ」の変容過程をPAC分析によって検討し、勇気づけ実践の質的な効果に関する知見も得られている。
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