【目的】本研究の目的は、「保護-アタッチメント」と「インターサブジェクティビティ-仲間性」という乳児期の社会的発達の中核概念である二つの対人関係システム間の相互影響過程を明らかにすることである。【方法】そこで、(1)平成16~18年度に実施したインターサブジェクティビティの縦断研究に参加した母子、50名中25名に協力を得て、3歳時点での親子共同遊び、課題解決場面で親のこの協力関係の個人差を測定した。(2)同時に、アタッチメントに代表される二者関係の親子関係とジェラシーという他者の内面を読み取る必要のある三者関係の情動の発達過程を比較するために、上記と並行して15名の新たな参加者について7、10か月の時「母親が乳児人形をあやす」と「母親が知らない大人と会話をする」という乳児を無視する場面での乳児の反応を比較した。【結果と考察】後者の結果からは、7か月の乳児でもジェラシー誘発場面では母親の注視(警戒)、三者場面では自己調整行動が多発することから、母親の意図の違いを読めることを示唆した。つまり、0歳後半の乳児は母親の文脈的な意図の相違に敏感に反応をするといえる。一方、前者の3歳児の結果からは親子遊びの中では時間と共にジョークのような心理操作で笑いを共有する頻度が高まることが見出された。つまり、協力というような他者と意図を合わせるだけではなく、他者の意図の裏をかくような他者の誤信念を導くような行為が観察された。【結論】これらから、対人関係の発達では、他者の心の読み取りという心理操作の発達システムがあることが示唆される。
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