研究概要 |
(1)生気論的因果の中心概念である「気」が心身相関的に理解されているか,(2)作物栽培活動への参加が,植物に関する幼児の生物学的・生気論的理解に影響を与えるかを検討した。(1)では3つの実験を行った。(a)大学生への質問紙調査により, vital forceに相当する「元気」「パワー」「エネルギー」のうち「パワー」と「エネルギー」は身体的な意味合いをもつが,「元気」は心身相関的なものとして概念化されていることが示された。(b)4歳児17名・5歳児19名に対する個別インタビュー実験により,(a)の結果が幼児にもあてはまることが示された。(c)5歳児18名と大学生23名に対して,「元気」の摂取メカニズムに関する説明課題と身体的・心理的活動から摂取された「元気」が身体と心に影響を与えるかを聞く課題を行った。食物摂取については幼児にもメカニズムに関する理解が認められたが,大学生になると,休息の間に「元気」が「蓄積される」とか,人間関係を通じて「元気」を「もらったり」「あげたりする」といったメカニズムが認められるようになった。また,幼児でも食物摂取によって取り込まれた「元気」が人の心理的側面に影響を与えるという理解が認められた。大学生になると「前向きでいること」が人の身体的健康に影響を与えるという理解が加わった。食物摂取の文脈では幼児でも生気論的概念を心身相関的に理解しているが,発達とともに,心身相関のメカニズムもその影響関係もより多様になることが明らかになった。(2)については,作物の栽培活動を日常的に実施している保育園の4歳児・5歳児に対するインタビュー実験を行った。この園の幼児は,作物栽培の経験のない幼児よりも,植物一般を生物学的理由(生気論的理由を含む)に基づき生命あるものとして理解しており,その理解は「食べ物をつくる」という文脈において顕著になることが示された。
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