幼児は、仲間との<けんか>をどのように捉えているのかについて、4歳児たちの1年後と2年後を追って縦断的に検討した。具体的には1対1のインタビューをおこない、〈けんか〉についての概念的・実際的な認識および手続き的な知識を尋ねる質問をした。その結果、4歳から5歳を経由して6歳へ至る年齢集団としての変化について、次のことが見出された;(1)4歳の時点では、〈けんか〉の対処について問われても、語るまでには至っていない子どもが少なからずいて、自覚的に捉えることがまだできかねている場合のあることがうかがえる。一方、ほぼ半数の子どもたちは、謝罪や譲歩について語った。謝罪や譲歩は、〈けんか〉のおさめ方の定型的なものであり、自己抑制的なものと考えられる。4歳の時点では、そのような自己抑制的で定型的な対処法について自覚的に捉えられることがほぼ半数の子どもたちが可能であることがうかがえた。(2)5歳の時点では、引き続き〈けんか〉の対処について自覚的に捉えることができかねている場合のあることがうかがえる。同時に、過半数の子どもたちが、謝罪や譲歩について語ったことからは、5歳の時点では、過半数がそのような定型的な対処法について自覚的に捉えられるようになったことがうかがえる。それとともに、「ジャンケン」および「とめる」と語った子どもの人数が増え、〈けんか〉を自身で交渉により収めようとしたものと解釈可能な語り方ができるように変化していった。(3)6歳の時点では、多くの子どもたち(約7割)が、〈けんか〉を自身で交渉により収めようとしたものと解釈可能な語り方ができるようになったことがうかがえるとともに、そのほか子どもたち(約3割)は、謝罪や譲歩について語った。6歳の時点では、〈けんか〉への対処として、自身で交渉により収めようとするものと、自己抑制的で定型的なものが、二つの大きな対処の仕方となっていたことが示唆される。
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