社会性の発達を捉えようとするとき、他者と自分の要求が対立するといった、他者とのコンフリクトに対して建設的に対処していく力の発達について検討することが決定的に重要である。本研究では、けんかやいざこざといった、子ども同士のコンフリクトに対処していく力の発達に焦点をしぼり、検討していくことにする。とりわけ、コンフリクトについて語ることに注目する。というのは、ある事柄について語ることとは、言語的に表象し自覚化することであり、それはその事柄に対する柔軟な調整を可能にすることにつながるからである。そしてそれは、対人場面におけるネガティブな感情を調整する力を育むことにもつながっていると考えられる。 具体的には、社会性の発達の礎が作られる幼児期にある子ども達を対象として、幼稚園・保育園の3歳児クラスから5歳児クラスまでの3年間における発達を捉えていく。子どもが所属している園のクラスにおける<けんか>についてインタビューをおこない、日常生活場面での<けんか>についての認識を取り上げて検討することにする。そして、その子どもたちの1年後、2年後を追い、縦断的にインタビューを実施することによって、<けんか>についての認識の発達の基本的な方向性を明らかにするとともに、個々人の認識の多様性を明らかにし、そのような認識が発達していく道筋の多様性について明らかにすることを目指す。
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