まず最初に文献収集を行い、自己のアイデンティティの質的および量的測定に関して理論的に論じている文献および心理尺度や面接、投影法などにより実践的にとらえようと試みている文献等を収集し、文献研究を行った。 その成果をもとに自己のアイデンティティを量的に測定する既存の心理尺度をいくつか選定し、大学生および成人を対象に自己のアイデンティティをとらえるための質問紙調査を実施した。そのデータをもとに、各尺度の特徴を明らかにするための統計解析および結果分析を行っているところである。 また、自己のアイデンティティを質的に捉えるための既存のアイデンティティ面接や投影法を検討し、榎本の開発した自己物語法面接およびSD法を心理尺度と並行して大学生および成人を対象に実施した。そのデータをもとに、自己のアイデンティティを質的にとらえる方法について検討すると同時に、質問紙調査のデータと付き合わせながら量的データと質的データの関連性の分析を行っているところである。 以上により、自己のアイデンティティを量的に測定する既存の心理尺度の個々の特徴や相互の関連性が明らかになるとともに、心理尺度によって量的にとらえられた側面と面接や投影法によって質的にとらえられた側面の関連性も明らかになった。こうした結果をもとに、次年度は新たな心理尺度の開発および面接法や投影法との組み合わせの方向性を検討する予定である。
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