筆者が選定した代表的な7つのアイデンティティ尺度の比較検討の結果、同じく自己のアイデンティティを測定する道具と銘打ってはいても、捉えている自己の側面には尺度ごとに大きなズレがあることが確認された。このような現状では、自己のアイデンティティに関するさまざまな知見を関連づけることは困難である。そこで、既存の尺度がとらえている自己のアイデンティティの諸側面を可能な限り包括的にとらえる尺度の試作を行った。それは、自己に関して、一貫性(連続性・独自性)、勤勉性、自己への信頼、現在の自己投入、主体性(自律性)、将来展望、時間への信頼、他者への信頼(親密性)、社会的役割の取り入れ、自己受容の10側面をとらえるものである。 一方で、筆者が開発した自己のアイデンティティを引き出す面接法である自己物語法に関しても、基本的方法の改訂版も作成し、実際に試行し、自己アイデンティティ尺度で得られたデータと面接法で得られたデータの突き合わせを行い、両者それぞれの特徴についての検討を行った。 以上の成果をもとに、現在自己アイデンティティ尺度と自己物語法それぞれの特徴の整理と両者を併用する総合的方法のあり方の検討を最終的にまとめているところである。
|