研究概要 |
平成19年度は、アスペルガー症候群/障害(AS)の不器用さの特徴を検討するために、AS児3・名の協調運動検査を実施した。その結果、ASでは微細運動と粗大運動の間、あるいは課題遂行プロセスの合理性とできばえとの間に解離があるとする「解離仮説」を裏付けるいくつかの重要な知見が得られた。ただしこれは3名という少人数から得られた知見であり、さらに多くの対象者でこの「解離仮説」を検証する必要があった。そこで、児童養護施設入所児119名を対象に,高機能自閉症スペクトラム障害(ASD)のスクリーニング(ASSQ-R)を実施し、有効回答であった117名中から15名(12.8%)のASDの基準に該当する子どもたちを抽出した。これらの子どもたちに対する協調運動の検査とそのトレーニングを含む心理治療プログラムを構築したが、そのプログラムの実際の適用は20年度の課題として残された。一方、健常乳幼児の協調運動の発達観察研究では、研究協力者と共同で、寝返り、葡匐、歩行、リーチング動作などの発達に着目して日誌法により記録を行なった。また追加的に、砂場と自宅居間における父子間での遊び場面をVTRに記録し、場面変化により子どもの動作や行為がどのように修飾されるのかについて検討を加えた。以上の本年度実施した研究経験をふまえ、研究代表者の萱村はASを含む軽度発達障害児のアセスメントや臨床行動観察に関する私見をまとめ、学内の学術誌に公表した。また、研究分担者の白瀧はアスペルガー症候群の神経心理学的アプローチについての解説を学術誌に公表した。
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