本研究では、(1)今の日本の実情に合い、学校教育や高齢者への専門的支援、地域での支援活動など様々な場面で使える、加齢および高齢者に関する知識とイメージを測定するテストを開発すること、および(2)加齢や高齢者について教えるための教材を開発し、実際に作成したテストを組み込んだ講義や研修内容についても検討することを目的としている。平成19年度は、(1)についての基礎的な研究を行なった。すなわち、テスト開発の基礎となる高齢者イメージに関する文献調査と、大学生を対象とした認知症高齢者と健常高齢者のイメージ、認知症に関する知識などについての質問紙調査である。文献調査では先行研究における質問項目や高齢者イメージに関連する要因を検討し、(1)高齢者イメージは主にSemantic Differential法により測定され、用いる形容詞対によりイメージの知見は異なること、(2)青年期以前の高齢者イメージは比較的肯定的で、その形成には高齢者と交流する頻度や関係性、高齢者への理解度などが関連していること、(3)イメージは青年期には否定的な方向に変化し、その後はおおむね維持される傾向があることがわかった。質問紙調査では認知症高齢者と健常高齢者のイメージとそれらに関連する要因について調べ、(1)高齢者へのイメージには、発達過程における高齢者との単なる同居経験よりは、高齢者とのかかわり体験や高齢者への肯定的感情、親や祖父母の態度に対する評価が影響する可能性があること、(2)イメージは認知症高齢者よりも健常高齢者に対する方が肯定的であること、(3)認知症高齢者のイメージは認知症の知識の程度による違いはみられなかったが、認知症の認識として尋ねた項目については知識の程度によって回答が異なることがわかった。これらの結果は、認知症を含む、加齢や高齢者に関する知識を測定するテスト作成のためのヒントになると考えられる。
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