本研究では、(1)今の日本の実情に合い、学校教育や高齢者への専門的支援、地域での支援活動など様々な場面で使える加齢および高齢者に関する知識とイメージを測定するテストを開発すること、(2)加齢や高齢者について教えるための教材を開発し、実際に作成したテストを組み込んだ講義や研修内容を検討すること、を目的とする。高齢者イメージは高齢者に関する知識の影響を受けるため、これまでFacts on Aging Quiz(FAQ)に手を加えた加齢および高齢者についての知識を測定する項目を検討しているが、より手軽に使用するために25項目からなるFAQの項目数を減らす必要がある。そこで、平成20年度に実施した「健常高齢者」と「高齢者」についての調査結果を用いて、項目の改訂を試みた。まず、高齢者に関する知識を測定する項目については、25項目を15項目にした。あわせて他の項目についても改訂を行い、認知症に関する知識を問う項目は8項目を7項目にした。さらに、イメージを測定する項目については、高齢者イメージを測定する項目は50対の形容詞対を12項目にしぼり、認知症高齢者のイメージ、認知症の認識はいずれも9項目のままとした。改訂項目により高齢者および認知症に関する知識と高齢者イメージの関係を調べたところ、高齢者および認知症に関する知識はいずれも得点の高低によって円熟性因子得点に差がみられた。また、老人心理学の受講によって、じっくりと高齢者に関心を向けることにより理解が深まるような側面に関連する高齢者イメージが肯定的に変化する可能性が示された。とくに、高齢者とかかわる機会をあまり持っていない、祖父母以外の高齢者に対する親の態度に思いやりを感じていない、高齢者に肯定的な感情をもっていないという場合に、老人心理学の講義を通して高齢者イメージが肯定的に変化する可能性のあることが示された。これらの結果は、さらなる調査項目の吟味や講義内容の検討のための材料となると考える。
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