20年度は、大きく三つの側面で成果をえることができた。一つは、大学教育における授業改善に関する研究を協同学習の観点からレビューし、教育心理学年報に展望論文として掲載することができた。この展望により、日本の大学において能動的学習(active learning)の重要性が認められ、さまざまな試みが行われているが、その中心的な方法として協同学習に対する関心が高まり、協同による授業改善が徐々に広がりつつあることが確認された。また協同学習の一形態であるプロジェクト学習も導入が進みつつあることが明らかになった。 二つ目は、20年度の実践研究として、昨年度までキャリア教育の授業で展開してきたプロジェクト学習を導入した授業を、心理学の専門科目である「心理基礎演習」に導入し、その有効性を再度検討した。その結果、専門性の高い授業においても対話中心の授業方法が有効であり、学生中心のプロジェクト学習を促進することが確認できた。 また三つ目は、他の心理学関係の授業を用いて、不確定志向性や協同に対する認識を測定し、不確定志向性が協同作業の認識におよぼす影響や、協同作業の認識が大学生の学習意欲におよぼす影響を明らかにすることができた。さらに、話し合いを導入した授業に初めて参加した学生たちの授業に対する評価や授業中に生起した感情反応を詳細に検討し、心理的変化を検討することができた。これらの知見は研究論文や学会発表論文として公表した。
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