本研究の目的は、児童に工夫した復習と予習を課し、それらを授業と関連づける学習指導を行うことによって、自己制御学習の力や態度とともに、授業内容を他の領域での学びや日常生活に関連付けるメタ認知の獲得を促して、その効果を実証することである。平成20年度は、公立小学校6年生3クラス計116名を対象に、算数において予習としての宿題を課す学習指導を実施した。手続きは事前の適性の測定(メタ認知・学習観の質問紙)→PhaseIII(1学期):メタ認知的知識を重視した予習プリントを課す学習指導実施→事後測定(学力測定、予習宿題についての自己評価)→PhaseIV(3学期):自己学習による予習を課す学習指導実施→事後の測定(学力測定、事前と同様の質問紙、予習宿題についての自己評価)である。 主な結果は次の通りである。1.事前のメタ認知については、19年度とほぼ同様の結果が得られ、その主成分得点を適性として用いた。2.PhaseIIIにおける予習宿題得点をもたらす要因を探るため重回帰分析を行ったが、事前のメタ認知の主効果のみが得られ、学習指導の効果は得られなかった。3.PhaseIII後の学力と思考力得点をもたらす要因については、メタ認知、学習指導、及びその交互作用のいずれの効果も得られなかったが、予習群と予習不十分群との間には有意な差が得られた。4.PhaseIV後の学力や思考力得点に関しても、PhaseIIIとほぼ同様の結果であった。以上のように、児童のもともとのメタ認知的能力によって、予習への取り組みがもたらされており、メタ認知的な学習指導の効果は、単元学習後の学力にまで影響を及ぼすものではなかった。予習で効果が得られなかったのは、児童の予習経験の少なさに寄るものと考えられ、今後はより長期的指導とその効果を探る必要が示唆された。
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