研究概要 |
本研究では,認知症高齢者の認知機能および精神機能の維持・改善という点において,現在最もエビデンスが得られているCognitive Stimulation Therapy(認知機能活性化アプローチ,以下CST)について,我が国に適した標準的プログラムを開発することを最終的な目標としている。本年は第1研究として,これまで我が国では詳細に紹介されていないCSTのそれ以前,あるいは他の介入法との関連性や開発経緯について資料収集を行った。そして,第2研究として,数施設,数グループでトライアウトを行うための日本版CSTプログラム試案作成を行った。その結果,第1研究では,CSTは,(1)1970年代から1980年代までに流行したReality Orientation Therapy/Training(ROT)の後継種として位置づけられること,(2)それまでのROへの批判に対し,KitwoodのPerson Centred Careの考えを取り入れ,QOLを考慮した内容に修正されたこと,(3)認知神経心理学の基礎知見がプログラムに取り入れられたこと,(4)回想法やメモリートレーニングなどの他の介入法も取り入られたこと,(5)より多くの介護現場で利用できるようにマニュアル化が目指されたこと,(5)以上のことからデイケアの標準的な活動プログラムとするにふさわしいものであることが明らかにされた。第2研究については,ロンドン大のSpector氏のグループにより開発されたCSTをもとに,同氏と連絡をとりあい,課題を我が国の文化に照らし合わせ,また問題点を改良し,14回のセッションを1クールとする試案を作成した。研究成果については1年目の本年は投稿・発表することができなかったが,来年度(2008年度)には第1研究を障害科学研究に投稿,第2研究を日本心理学会,認知証ケア学会で発表する予定であり,一部エントリーを済ませている。
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